98年フランスW杯の決勝トーナメント1回戦。パラグアイ対フランス。
ちなみにこの試合、フランスの中心選手で、決勝で2得点をあげ大会MVPに輝いた若きジダンは、予選リーグで相手選手を蹴り、2試合出場停止中。結構キレやすいのがまた魅力。
対するパラグアイは、キーパーでキャプテンのチラベルを中心とした堅守速攻のスタイルで、ビッグネームは少ないが南米独特の試合巧者ぶりを発揮する良いチーム。
試合はジダン不在ながらも、中盤にキャプテン・デシャン、プティ、デサイー、と豪華なメンバーを揃えたフランスが地元声援をうけ、ボールを支配しパラグアイゴールに何度も迫る。
しかしパラグアイは攻められながらも、最後のところで決定的なシュートは打たせない。逆に数少ないチャンスからカウンターでフランスを慌てさせる。
試合は延長戦に入り、さらにフランスの猛攻が続く。パラグアイはさすがに疲労もあり、フランスに危ういシュートを打たれるが、チラベルのファインセーブなどでゴールは許さない。ボールを弾き出した後、すぐさま立ち上がり、味方DFを鼓舞する姿は正にキャプテンとして鬼神のごとき活躍である。
フランスもそれでも何とか1点をもぎ取ろうと、センターバックのブランもFWの位置まで上がり、必死でパラグアイゴールに迫る。このままだとPK戦かと思った延長後半、そのDFのブランが流れの中からついにゴール!当時はゴールデンゴール方式なので、ここで試合終了。
歓喜のフランス。
点を取られたパラグアイのチラベルは、そのままゴール前で横になり、手袋をしたままの手で顔を覆う。それはほんの5秒くらいの短い時間だった。
そしてチラベルはすぐに立ち上がり、ピッチに倒れこんでいる仲間たちの所へ行き、一人ずつ手を取り健闘を称える。
手に汗握る攻防、延長のゴールデンゴールによる地元フランスの勝利。そんな最高の試合を見たスタジアムの観客たちは、敗者のパラグアイにも惜しみない拍手をおくる。
痺れる試合。
そんな形容がふさわしい。両チーム共に全てを出し切った、私の中では記憶に残る好ゲームだった。
日本代表には、南アフリカワールドカップでパラグアイのような痺れる負けっぷりを期待したい。